俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

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美人の部下がどうやっても不幸になっちゃう

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どうも。

私の職場には100人を超える部下がいる。

それだけの人数がいると、老若男女はもちろんのこと外人もいればアホもいるし、たまにだが美女が紛れてくることもある。

今回はそんな美人の部下の話。

 

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能力はまあまあ

世の美女たちは過剰に評価されがちだし、それこそが美女の特権と言えるだろう。

私も美女には目がないが、直属の部下に下心を抱くほど危険な上司じゃないし、そもそも私には愛する家族がいるのでそんな危険な橋を渡る気もさらさらない。職場内で不倫とかする人って頭のネジがどこか吹っ飛んでいると思う。ブレーキをかけるべき所でかけられない人的な。まあそういう人が犯罪を犯したりするんだろうけど。

で、そんな美人の部下(仮に名前を島本さんする)は能力的にはまあまあだった。

これは何の偏見もなく上司としての観察の結果。そこまでダメじゃないけど、優秀さは特に感じないという印象。

人柄が聖人

この島本さんは仕事上ではほとんど目立った業績を挙げられることはなかったが、最強とも言える武器を持っている。

それが人柄である。一言で表わすと「聖人」。

まず怒らない。次によく笑う。そして人に優しい。しかも根性がある。

絵に描いたようないい子だったので、異動してきた当初はかなりびっくりした。「こんな人間が存在するのか」と。聞いたら「学生時代に剣道部だったので…」ってそれは理由になるのか?

そんな島本さんなので、仕事の出来はまあまあだったが、その人柄と根性を頼りにして色々と仕事を任せていた。彼女も彼女で任せられた業務を自分の能力の限界まで使って食らいついていた。

おばちゃん達から嫌われる

うちの職場では社員が2、3人でチームを組み、20人程度のパート従業員を抱えることになる。離職率が高い職場なので社員は皆若く、相手をするパートさんたちはほとんど年上。自分の親ぐらいの人に仕事をさせることになる。

これが新人にはけっこうキツかったりする。年上なのでもちろん礼儀はわきまえないといけないのだが、仕事はやらせないといけないし、何か間違っていたら注意をしなければならない。

ただ女性特有の厚かましさで、2年もすれば余裕で相手できるようになっていく。

この変化を見るのは上司として頼もしく感じる部分もあれば、女の子がおばちゃん化する様を目撃することになるので複雑だったりするのだが、それは全然関係ない話である。

 

島本さんはすでに3年目。おばちゃん達の相手など余裕で出来る。出来るはずだった。

何やら毎日暗い顔をしているので「何かあった?」と聞いた所(なまじ根性があるから自分から相談してこない)、「パートさんから文句が出ていて…」という話だった。

職場のことなので詳しくここで説明はしないが、どう聞いても「そんなのどうでも良くね?」というレベルの文句だった。つまりイチャモンである。そしてそのイチャモンに対して対応ができていない島本さんをもうチームから外してくれ、おばちゃんたちに言われていた。

とにかく理不尽極まりない。話を聞いているだけで腹が立ってきたので、「自分が言おうか?」と提案するも、「いえ、私が何とかします」と譲らない。まあそれならいいけど。

けど一向に状況が改善する様子はない。島本さんの顔色は日に日に悪くなる一方。パートさんたちの悪態は私に直接来るようにもなった。「あの子を別の部署に変えて」と。

意を決した島本さん

それから間もなく島本さんより「もう限界です」と声が上がった。私もそれはすでに知っていたので即刻部署異動をした。

 

部署異動になった島本さんは本来の明るさを取り戻した。

 

移動後数日たったある日、島本さんから仕事終わりに声をかけられた。

曰く、実は私が島本さんの部署に異動してくる前かパートさんからは嫌われていたこと。どれだけ具体的な指示を出しても「分かりにくい」と言われてしまうこと。食堂で顔を合わせると席を変えられてしまうこと。などなどとにかく色々あったそうなのだ。

意を決して当時の所属長に相談したが「なんとかならない?」の一言で片付けられてしまい、もう相談できなくなってしまったそうだ。上司に負担をかけることを極端に恐れる子なのだ。

それが今回は私がすぐさま異動という対応を取ってくれたので感謝している、今回の恩は忘れませんと、真っ直ぐこちらの目を見ながら言ってきた。

私はあまり人の目を見るのが得意ではないし、生粋のひねくれ者なので、「はいはい」ぐらいで済ませたのだが、正直少し感動していた。ほんの少しだが。

悲劇は繰り返される

しかし、これでは終わらなかった。

同じようなことが異動先でも起こってしまったのだ。「島本は何も分かっていない」「指示があいまい」「言っていることが毎回違う」

これにはさすがの私も考えざるを得なかった。

もしかして本当に島本さんはダメな子なんじゃないかと。美人であることで自分の目に余計なバイアスがかかっていたんじゃないかと真剣に考えた。

大体にして言うほど私は人格者じゃない。自分を信用できなくなることなんてザラにある。

だがどうやら真相は別の所にあったようだ。

おばちゃんを尋問

我慢の限界に来た私は文句を言っているおばちゃんを一人ずつ呼び出し、詳しく話を聞くことにした。

個室で2人きりになると大抵の人は正直に語ってくれる。もし語ってくれなくても態度で大体のことは分かる。それが狙いだった。

おばちゃんたちに聞いたのはストレートに「なんで島本さんに意地悪すんの?」ということ。

返事はさまざま、仕事の具体的な細かい内容もたくさん出てきたが、どれもが本当に些細なことなので、「それって本当に重要?職場の責任者である社員を困らせるだけの価値がある内容?仕事を進める上でどれだけ意味がある?」とかなり力技で押さえつけた。

本来ならばこういうことはしない。できるだけ話し合いの中で解決するのが私のやり方だし、上司とはそうあるべきだとこのブログでも再三語っている。

だが、今回おばちゃん達と対峙して伝わってきたのは「誤魔化したい」と「後ろめたい」という感情だった。だからこそ強硬な態度を取った。嫌われるのであまりやりたくはなかったが仕方ない。これも上司の役目である。

これが功を奏した。私の強硬な態度でおばちゃんたちの本心がかなり伝わってきた。

言葉にはしなくとも、話の進め方や視線の運び方で分かる。

誤魔化したい人の話は不自然になるし、後ろめたい人は話の核心に迫ると目をそらす。おばちゃんたちの態度はまさにそれだった。

 

これで合点がいった。

きっと彼女たちは島本さんに対して「嫉妬」があったのだ。

 

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これが真相

おばちゃんたちが若い子に意地悪をするのは、今に始まったことじゃない。うちの職場ではよく見かける光景だし、まあ可愛いものだ。

だが今回の島本さんの一件はこれまでの比ではない。本人をあまりにも追い詰めすぎた。放っておいたら精神科、というレベルだった。

 

あまり言いたくないが、やはりそこまでおばちゃんたちが暴走してしまったのは、島本さんが美人だったからなのだ。「可愛いんだからこれくらいいいでしょ!」という謎の理論が働いていたんじゃないだろうか。女はいくつになっても女子なのだと思い知らされる。

またそれに拍車をかけたのが、島本さんの態度だった。

彼女は私に面と向かって感謝の言葉を言えるぐらい真っ直ぐな子だ。おばちゃんたちから理不尽な要求をされても必死でどうしたらいいかを考えて、その都度対応してしまった。

それは全然間違っていなかったはずなのだが、おばちゃんたちからしたら面白くないのは間違いない。困らせて挫ける所が見たかったはずなのに、逆に乗り越えてしまうのだから。

これだと余計に意地悪くなるだろうし、もしかしたら罪悪感にも拍車がかかったかもしれない。「こんないい子に意地悪している私って最低」と。

そうなると人は自分の汚さに目を向けようとしなくなる。自分の心に蓋をし、残虐性を増す。行為に没頭することで罪悪感を隠すのだ。

 

おばちゃんたちに直接聞いたわけではないので、確かなことじゃない。だがこれが真相だと確信している。

 

その後

島本さんはほどなくして別の事業所に異動になった。もう私の手元にいないので、どうしているのかは人づてに聞くしかないのだが、相変わらず誠実に食らいついているようだ。何よりである。

 

今まで私は美女というのは人生で圧倒的に得をする、と認識していた。

だがそれは状況によりけりで、素直に認め、賞賛してくれる人が周りにいることが必須条件になるのだと分かった。

きっと芸能界に入るような可愛い子も、素人のままでいれば幸せに、そして美女であることを武器として使えるのだろうが、芸能界に入った瞬間にその可愛さは紛れるだろうし、色々と通用しなくなるだろう。

ちやほやされる環境じゃなきゃ美女は幸せになれないのだ。

意外と美女も難しいものである。その点、ブスはどこに行っても可愛がられるからラクだ。私もブスな子がけっこう好きだ。明るいブスに限るが。まあどうでもいいか。

 

先日、島本さんは結婚した。もう島本さんじゃなくなった。相手はお似合いのイケメンである。誰もが羨むカップルとはこのことか。

 

彼女の結婚式には出席しなかったが、式の写真は拝見させてもらった。

 

写真の中の彼女はとても幸せそうだった。

「結婚式なんだから当たり前か」と思う一方で、元上司としてその笑顔が続くことを願った次第である。

 

以上。

 

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