俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

「トヨタ生産方式」という印籠を振りかざす人達について

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どうも。

 

私は高校を卒業してからというもの、お菓子業界でせっせと働いて過ごしてきた。いわゆる製造業だ。

ところで、日本の製造業は全員がある宗教にハマっているのをご存知だろうか。いわゆる「トヨタ生産方式教」である。日本の製造業はこの唯一神に日々祈りを捧げながら業務をこなしているという話はあまりにも有名である。

私の職場でも「トヨタ生産方式」は祀り上げられている。かくいう私も信者のひとりである。入社した当時からずっと「カイゼン」という修行を繰り返している。

ところがこの「トヨタ生産方式」に困った側面があることをご存知だろうか。

今回はそんなお話である。

職場に現れたマイスター

先日、親会社から「トヨタ生産方式マスター」なる人が遣わされてきた。よく知らないが、実際にトヨタで勉強をしてきたそれはそれは尊い御方だそうだ。

日々、職場の「カイゼン」に頭を悩ませている私としては「どれだけ新しい知見をもたらしてくれるのだろうか?」とかなりワクワクしていた。正直、最近のカイゼンはありきたりなものばかりだったからだ。

しかし私の期待はあっさりと裏切られることになる。

どうやらマスターは会議がお好きなようだった。現場に足を運ぶことがお好きではないようであった。

会議室から遠隔的に出される指摘や、指示は、現場にいる私たちからしたら「ムダ」そのものだった。明らかに現場を分かっていない印象を受けた。

私だって製造現場で10年以上カイゼンを行なってきた。何が見当違いで、何が効果的かぐらいは分かる。その私がどれだけ頭をひねってみても、「ムダ」にしか見えない指示たち。

 

「なんだこれは…?」

 

私の頭の中は次第に疑問符と怒りで満たされていった。

猛威をふるうマスター

マスターが出席している会議に私は出ていないので、又聞きでしかないのだが、どうやら困ったことになっているらしい。

以下に状況をまとめると…

 

・マスターは資料でしか判断しない。

・言っていることはまっとうだが、あまりにも教科書的すぎてうちの会社のやり方と合わないことが多々ある。

・それを説明すると「それは逃げだ」と言われてしまう。

・会議でカイゼンの実施内容を評価してもらうのだが、トヨタで事例のあるものをやるとやたら褒め、自分の知識にないようなことをすると途端に不機嫌になる。

・親会社から派遣されている人なので、上司たちも文句を言うに言えない。

・会議がとにかく長い。用意させる資料がとにかく多い。上司たちの時間がいたずらに奪われている。

トヨタで学んだことをそのままやらせようとするから、どうしても現場にそぐわないルールや指示が出てきている。

 

こんなところだろうか。

困ったようすでこのことを語る上司の顔を見ながら私は、水戸黄門のイメージが湧いていた。印籠を突きつけられ、平服する市民たち…。

権威になる「トヨタ生産方式

どうやらトヨタで勉強してきたことが権威になっているようである。その人達が「トヨタ生産方式」という印籠を振りかざして、現場をやりにくくしていっている。
きっと本来は「トヨタ生産方式」を利用し、成果を上げることが目的のはずだ。しかし中途半端に知識を持ってしまった自称「トヨタ生産方式マスター」がはびこっているため、力の弱い現場はやられっぱなしである。

上司が強い人であれば文句を言えるのだろうが、親会社との関係とかいろいろ大人の事情があるみたいで、今のところは黙ってムダなことをやらなければならないようだ。

私は腐るほど部下を抱えているので、ムダな指示(むしろ指図)をするたびに「なんでこんなことするんですか?」という純粋極まりない疑問をぶつけられる。「命令されているから仕方ないんだよ」と説明するときの不快感を解消する方法は「トヨタ生産方式」にはないのだろうか?ぜひご教授いただきたい。
部下に嫌な思いをさせるのはなかなか神経に堪える。「仕方ないんだよ」と押さえつけるぐらいなら、むしろ「私の宗教上の理由でして、えへえへ」とかなんとかふざけた答えを返していた方がよっぽど精神衛生上よろしいだろう。まあ部下にとっては堪ったものではないだろうが。

人は教えようとするときに間違う

あと、ひとつ思い出したのが、いつだかのワイドナショー武田鉄矢が言っていた「人間というのは面白いもので、教えようとした時に必ず間違うんですよ」という言葉だ。

news.mynavi.jp

私の職場にやってきたマスターもきっと、「教えたくてうずうず」していたのかもしれない。

教える、というのはやり方によってはかなりの承認欲求を満たすことができる。教える側と教わる側という力関係ができあがっているので、無理難題をふっかけて翻弄することだってできる。職人の世界でよくある「見て盗め」的なやつだ。相手の人生を翻弄するのは得も言われぬ快感がある。

私の職場にやってきたマスターがただのアホなのかどうかは私には分からない。

ただ言えるのは、現に働いている私たちは迷惑しているし、上司達も今ではマスターが会議にしか顔を出さないのをいいことに、報告書をでっち上げるようになっている。本当に茶番である。

大野耐一さんは天国でこの状況をどう見ているだろうか。あなたの生み出した「トヨタ生産方式」が、誰かを苦しめる道具に成り下がっていますよ。

誤解してもらいたくないのだが、私は日頃から「トヨタ生産方式」にはお世話になっている。今現在の給料を貰えているのもそこで学んだ「カイゼン」があったからこそである。「トヨタ生産方式」には何の恨みもないし、きっとまともなマスターがいることも想像できる。

問題はそれを振りかざす人達であることをここに明記しておく。

傲慢になってはいけない

一応、そのマスターは任期があって、あと半年も我慢すればいなくなる。喜ばしいことである。

今回の件で学んだことは、「人は力を持つと使いたくなる」というひどく当たり前の事実と、「傲慢になってはいけない」「偉くなってはいけない」という謙虚な心の大事さであった。

私も100人を超える部下を抱える身なので、人に教えることは多い。というか就業時間のほとんどが教えることに費やされている。きっと偉そうに語っている時もあるのだろう。あのマスターのように。

 

人の振り見て我が振り直せ、ということであろう。

 

以上。

 

余談だが、トヨタ系の本を読んでいると、よく大野耐一氏の名前が出てくる。最初に「トヨタ方式」を考えた方なのだから当たり前なのだが、それが権威になりすぎて、今度は「あの大野耐一から直接指導を受けた〇〇」とか、「その右腕」というふうに永遠に派生している。

私はそれを見たときになんだか興醒めしていたのだが、無意識に彼らの「印籠感」を感じていたのだろう。虎の威を借る…というやつだろうか。

 

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