俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

知り合いに勧めて好評だった小説7冊目『失はれる物語』乙一

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◯天才の名と評される作家

乙一。16歳の時に執筆した小説『夏と花火と私の死体』でデビューした天才称される作家です。ミステリー小説が好きな人でその名を知らない人はいないでしょう。
一般の方に説明するのは簡単です。あのアニメ映画監督の押井守の娘さんと結婚した方です。

作品の特徴としては、残酷描写をさらっと出す猟奇的な空気に満ちた”黒”。
思春期の少年少女を取り扱い淡い恋心や心の動きを捉えた”白”と全く別の側面を高いレベルで両立させています。
また圧倒的なリーダビリティでも有名です。さらさらと読みやすく文章は彼の生み出すひねくれた物語と組み合わさると、とてつもない衝撃を私たちに与えます。

年齢のこともあり、デビュー早々から注目は集まっていました。出す作品はことごとくヒットし、映像化されたものも多くあります。
しかし乙一本人が小説を生み出すことに飽きてしまったのか、それとも常に衝撃を与え続けなければいけなくなってしまった状況が苦しくなってしまったのか、ある時を境にパッタリと筆を取らなくなってしまいました。

◯短編の名手

乙一はとにかく短編です。長編小説も何本か書いていますが、まあイマイチです。
そして彼の短編の武器は”アイデア”にあります。
乙一作品にファンの方が求めていたのはこの”アイデア”でした。

説明してしまうとネタバレになってしまうので、あまり書けませんがまさに足元をすくわれる展開をかましてきます。ミステリ短編で必要なことはずばり”切れ味”なのですが、乙一の短編は切れ味バツグンで一度味わってしまえば読者に「もっともっと」と思わせることは間違いないでしょう。

しかし良質なアイデアを生み出し続けることは不可能です。
ミステリなのかホラーなのかよく分からない作品やなんのひねりもない作品が増えるにつれ私としては「もう才能が枯れたかな?」という印象でした。

そんな彼が取った手段が作風の変更でもなく、ペンネームの変更でした。

◯再び輝き出す

中田永一、山白朝子。これが乙一の別名義となっています。
黒い作品は影を潜めましたが以前の白い作品に近い作風で発表を重ねています。
そして去年発表された作品が本屋大賞にノミネートされ一気に脚光を浴びました。
映画化が決まりましたが、『くちびるに歌を』という作品がそうです。書店で目にした方も多いのではないでしょうか?

くちびるに歌を (小学館文庫)

中田 永一 小学館 2013-12-06
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残念ながらまだ未読なのですが、面白いことは雰囲気で分かります(ドヤ顔)。
それは読むのを楽しみにしておくとして、今回は彼の今までの発表作の中でも最高傑作と私が認めている別の作品を紹介します。
 

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◯切なさの貴重さ

いつも通りBOOKデーターベースより。

 
目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

この作品の最大の魅力は”切なさ”です。
切なさの名手と言われた乙一の真骨頂がこの作品です。随所に散りばめられた”切なさ”が私達の胸をキュンキュンと締め付けてくるのです。
切なさというやつは普段なかなか体験できるものではありません。この小説を読むと私達がどれだけ良質な切なさを経験していないか、そして『失はれる物語』を通して得られる心の動きがどれだけ貴重なものか気付かされることでしょう。
言い切ります。この”切なさ”はこの作品でしか味わえません。

こちらも短編集なので色々な味わいはありますが、どれも極上なのは間違いありません。そして乙一の企みにニヤリとしていただきたい所です。間違いなく彼の作品に魅了されることでしょう。

失はれる物語 (角川文庫)

乙一 角川書店 2006-06
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 ちなみに私はハードカバーの時に買ったのですが、表紙が半透明になっていて裏面に楽譜が印刷された非常に美しい装丁で、そこも大好きな要因でした。ちゃんと物語ともリンクしているし。
それにしてもわざわざハードカバーで高いお金を出して買った私よりも、後から出た文庫を安い金額で買う人の方が収録作品を多く読めるのっておかしくないですか?

一応、今回は『失はれる物語』の紹介でしたが、乙一の作品はどれも高クオリティなのでぜひ他のも手にとってみてください。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

乙一 幻冬舎 2002-04
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この作品も映像化しています。
盲目の女性とその家に忍び込んでこっそりと同棲を始める変態の心温まる物語です。
もうこの設定に乙一の変態性が現れていますよね。でも作品の読後感はとても爽やかです。間違いなくこれも名作。

GOTH 夜の章 (角川文庫)

乙一 角川書店 2005-06-25
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こちらも傑作。乙一キラーコンテンツです。ミステリー小説ですが読者を騙す精度が半端じゃ無いです。これも唯一無二の作品です。 

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