俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

大人を悶絶させる達人。森絵都のおすすめ作品を教える

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どうも。

大好きな女性作家を紹介しよう。

最初に読むべきは? 

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彼女の名前は森絵都。「もりえと」と読む。直木賞作家である。

私が彼女の作品に出会ったのは中学生のとき。それまで本にまったく馴染みのなかった私を、一気に読書の世界へと誘った作家である。

 

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私と同じような出会い方をしている人は多いと思う。元々、森絵都は中高生をターゲットにした児童文学を主戦場としていたからだ。

なので森絵都の作品や作家性を確認したいのであれば、まずは児童文学作品から手を出してみてはいかがだろうか。

私に文学の衝撃をもたらした、森絵都とのファーストコンタクト作品は『宇宙のみなしご』である。個人的に非常に思い入れのある作品ではあるのだが、当時の推薦図書になっていたので、きっとあの頃、日本中の中学で私と同じような衝撃を受けた人がいるんじゃないかと想像する。

他の作品で有名どころは、映画化もされた『カラフル』だろうか。

どちらも森絵都の入門書として自信を持ってオススメする。

宇宙のみなしご

中学2年生の陽子と1つ歳下の弟リン。両親が仕事で忙しく、いつも2人で自己流の遊びを生み出してきた。新しく見つけたとっておきの遊びは、真夜中に近所の家に忍び込んで屋根にのぼること。リンと同じ陸上部の七瀬さんも加わり、ある夜3人で屋根にいたところ、クラスのいじめられっ子、キオスクにその様子を見られてしまう…。第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞の青春物語。 

まず設定が素晴らしい。他人の家の屋根に勝手に登っちゃうんだから。窓を割ったり、盗んだバイクで走り出すような青春のこじらせ方ではない。ここの塩梅が奇妙な面白さを生んでいる。

しかし、森絵都初心者の方に勘違いしてほしくないのは、彼女はそんなトリッキーな設定で読者を楽しませる作家ではないということ。

あくまでも、緻密でセンスに溢れた文章表現。そして誰しもの心にある“青さ”を切り取る巧さ。それが森絵都なのだ。

巧みな文章に、心の中をくすぐられるような感覚を覚えるはずだ。

悶絶せよ。

カラフル 

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。

『カラフル』というタイトルを冠しているわりには非常にシンプルな装丁。しかしここにもしっかりと意味が込められている。映画の方はとんでもなくカラフルだけどね。

この作品の凄さは、「とにかくムダがない」ことである。

表現のひとつひとつも、会話のあれこれも、主人公の心の動きも、周囲との軋轢も、全てが物語のために必要なものになっている。そしてこの作品が読者に伝えるべきメッセージに力を与える役割を果たしている。

この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。

森絵都の作品の中でも一二を争う名作。

 

映画の方はこちら。 

リズム 

あとはデビュー作である『リズム』も佳作だと思う。初っ端から森絵都の良さが全開に出ていて、「やっぱり文章ってのは才能による部分が大きいんだなぁ」と思い知らされた次第。

私の場合、ただのブロガーでしかないけど、あまりの才能の差に絶望したくもなるってもんよ。

さゆきは中学1年生。近所に住むいとこの真ちゃんが、小さい頃から大好きだった。真ちゃんは高校には行かず、バイトをしながらロックバンドの活動に打ち込んでいる。金髪頭に眉をひそめる人もいるけれど、さゆきにとっては昔も今も変わらぬ存在だ。ある日さゆきは、真ちゃんの両親が離婚するかもしれないという話を耳にしてしまい…。第31回講談社児童文学新人賞、第2回椋鳩十児童文学賞を受賞した、著者のデビュー作。 

作中で語られる「まわりのことが気になって思うように動いたり笑ったりできなくなる」というのは、 中高生だけに限らず人間みんな感じることだと思う。

私は大人になってから『リズム』を読んだのだが、確実に突き刺さったね。ハートに。なんか鋭いものが。いっそ血が出たらと思うぐらいだ。

ゴールド・フィッシュ 

デビュー作『リズム』の2年後の世界を描いたのがこちらの『ゴールド・フィッシュ』。続編なのに前作よりも評価が高いという不思議。いや違うか、前作のファンばかりが読むから評価が高いのか。

中学3年になったさゆきは、高校受験をひかえ揺れていた。大好きないとこの真ちゃんは、音楽で成功するという夢のために東京へ出て行った。幼なじみのテツは、めっきり大人びて、自分の進む道を見つけている。それに引き換え、さゆきは未だにやりたいことが見つからない。そんなある日、真ちゃんのバンドが解散したという話を聞き…。デビュー作『リズム』の2年後の世界を描き、世代を超えて熱い支持を得る著者の初期傑作。 

とはいえ、私もこの『ゴールド・フィッシュ』は大好きな作品のひとつ。紹介せずにはいられないのだ。

挑戦することの素晴らしさと美しさを教えてくれる名作。Amazonのレビューにも書いてあったが、大人が読むと逆にキツイかもしれない。あの頃の自分は何をやっていたんだ、って。

 

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大人向け 

森絵都の真骨頂は児童文学にあるのは間違いないが、それでも世の中には「児童文学なんて今更読めっかよ」という読書ヤンキーがいることも私はよく理解している。できれば上に挙げた作品を読んでもらいたいものだが、好みは変えられるものではないから仕方ないだろう。

ということで、次は大人向けの森絵都作品を紹介しよう。

永遠の出口 

まずはこれ。というか、これだけでもいいから読め。アラサー辺りが読むと突き刺さりすぎて泣いちゃうかもしれない。あの頃の自分に出会ってぶん殴られるかもしれない。

「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。第一回本屋大賞第四位作品。 

永遠についてどう思うかとかは気にしないで構わない。出口も大丈夫だ。森絵都の大ファンである私の中で、『カラフル』と『永遠の出口』は二大巨頭である。他にいくらでも面白い作品はあるけれども、それでもこのふたつは動かしがたい。

だから読め。森絵都の文章を思い知るのだ。 

風に舞いあがるビニールシート

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

はっきり書くが、私は直木賞受賞作というものをまったく信用していない。特にその著者の作品の中で「直木賞受賞作」という看板は何も意味を成さない。そしてこの作品も同様である。他の森絵都作品となんら変わらないクオリティである。

ただこの作品は短編集なので、一冊で評価すると「まあ普通」だとは思うが、表題作の『風に舞いあがるビニールシート』は一読の価値があるだろう。タイトルの妙もあるし、「難解で重苦しい現実は見て見ぬふりをされる」という作中の言葉には考えさせられるものがあるだろう。

いつかパラソルの下で

柏原野々は天然石を売る店で働く25歳の独身女性。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入る。世間一般にはありふれたエピソードかもしれないが、柏原家にとっては驚天動地の一大事。真偽を探るため、野々は父の足跡を辿るのだが…。 

これも設定が絶妙。「天然石を売る25歳」ってそれだけで何か伝わってくるものがあると思う。いや単なる私の偏見だろうか。

森絵都が初めて大人向けに書いた小説ということでかなり期待して読んだのだが、これがもう読後感が最高。作中には嘔吐するシーンがあるのだが、それが異常に爽快なのだ。

どうだろうか?あなたの今までの人生の中で他人が嘔吐しているのを見て「爽快!」と思ったことがあるだろうか。少なくとも私はない。そんな貴重な体験ができる奇書である。

大体にしてタイトルからして爽快である。ぜひともこの素敵なタイトルの意味と、爽快な嘔吐シーンを探しに、ページを捲ってみてほしい。

SFもの

さて、ここまで児童文学作品と大人向けの作品を紹介してきた。

実は森絵都の作品はこれだけではない。彼女のもうひとつの顔「SF」である。

とは言うものの、そこまでゴリゴリのSF作品ではない。超次元空間みたいなのは出てこない。いや出てくるかも。

とにかく、あまりにも日常から離れた話は展開されず、あくまでも片足を現実世界に置いて物語は進行していく。

ラン 

9年前、家族を事故で失った環は、大学を中退し孤独な日々を送っていた。ある日、仲良くなった紺野さんからもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で“あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決意をするが…。哀しみを乗り越え懸命に生きる姿を丁寧に描いた、感涙の青春ストーリー。 

SF設定もいいのだが、主人公の成長に素直に感動させられる作品。

読み終えてから他の人の感想を見てみたら、意外と賛否に分かれていてびっくりした。「否」の人はきっと現実的な物語が来るもんだと期待しすぎていたのだろう。

もっと頭の中を空っぽにして、素直気持ちで主人公に同化すれば楽しめたのに、と私のような読書手練は思うのだった。

DIVE!!

オリンピック出場をかけて、少年たちの熱く長い闘いがはじまる! 2008年6月全国公開映画『DIVE!!』原作本。高さ10メートルから時速60キロで飛び込み、技の正確さと美しさを競うダイビング。赤字経営のクラブ存続の条件はなんとオリンピック出場だった!少年たちの長く熱い夏が始まる。第52回小学館児童出版文化賞受賞作。 

文庫の解説に「これはSF」と書いてあったので素直に従ってみた。

ただ中身は純粋なる「スポ根もの」である。飛び込みという超マイナー競技に情熱を注ぐ少年たちの心情を森絵都の達者な筆が描き出してくれるのだが、これもう…最高!

真夏の日差しがキラキラとまぶしく、少年たちの心模様もまぶしく、おっさんの私は自分の汚さを見せつけられているようで、速攻でホームセンターに首をくくるための縄を探しに行ったものだ(嘘)。

素敵な青春時代を過ごした人も、そうでない人にもオススメできる作品である。ちなみに、高校最後の体育祭を教室でUNOをして過ごしていた私は後者である。

森絵都の魅力

森絵都は恐ろしい作家である。ここまで人の心を鮮やかに切り出す作家は他にいない。

それゆえに森絵都作品を読んだ人々は、自分の中に封印した青さや弱さと再び対峙することになる。 

それはときに郷愁を誘い感動を呼ぶかもしれないが、ときには残酷なまでに大人の心を切り裂いてしまう。「あの頃の自分」を思い出したりする。

私はそこに森絵都という作家の魅力を感じる。

小説はあくまでもフィクションである。架空の物語であり、読者は他人ごとだ。だからこそ楽しめるとも言えるが、距離が開いているとも言える。

しかし、森絵都はフィクション世界の住人たちを使って、読者の心の内部まで侵入してくる。それによって他の作品では味わえないような読書体験をもたらすのだ。

 

彼女の作品に魅せられる人は多い。

それは彼女の作品に触れ、自分の心の動きを確かに感じたからだろうと、私は思うのだ。

同じく彼女の作品に心動かされた人間として。

 

以上。

 


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