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俺だってヒーローになりてえよ

圧倒的な読書量と端から忘却していく貧相な記憶力、ふざけた文章を駆使するポンコツブロガー。 同情されているのか、やたらとオススメ本や漫画が売れている。月商30万円ぐらい。 どうぞよろしく。

キャラクターに命を注ぎ続ける作家“奥田英朗”のオススメ作品を教える



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どうも。大好きな作家のオススメ作品を紹介しよう。

 

人間フェチ

奥田英朗の最大のセールスポイントは、読者をグイグイとストーリーテリングにあると私は思っていた。現にこれから紹介する作品のほとんどが、「先が早く読みたい!でも終わってほしくない!」と思うぐらい美味しい作品ばかりだったからだ。

しかし、いつだか彼のインタビューを読んでびっくりした。

奥田英朗はあれだけ面白い話を作り出しているにも関わらず「物語にはあまり興味がない」らしいのだ。

じゃあ一体何に興味があるのかといえば、それは「人間」である。

奥田英朗いわく、「魅力的な人間が作り出せれば、あとは勝手に面白い話ができる」らしい。

私のような凡人には到底理解が及ばない世界ではあるが、いち読書中毒患者としては納得できる部分がある。分かりやすい例を挙げるならば、伊坂幸太郎村上春樹だろうか。彼らの作品は登場人物がいちいち魅力的で、それだけで物語を先に進める力が生まれる。

 

でもそこまで魅力は感じない?

ただ、ちょっと思うのは私は極度の奥田英朗ファンではあるが、彼の作品を読んでいてそこまで「このキャラクター最高!」と感じたことがあまりないことだ。

別にいないことはない。奥田英朗の出世作である『伊良部シリーズ』の異常者精神科医伊良部なんてのはその最たる例だし、『サウスバウンド』のお父さんもなかなか良い味を出している。

でもそんな強烈なキャラクターというのは、奥田英朗小説の中でも少数派である。珍しいのだ。

では奥田英朗の語る「魅力的な人間」とは何か?

それはつまるところ、「読者と血を通わせられるか」ではないだろうか。

伊坂小説や村上春樹小説に出てくるような突飛なキャラクターも魅力的だが、それとは真逆の「読者と近しい存在」は物語世界に我々読者を引っ張り込む力がある。まるで彼らと一緒に物語を体験しているかのように錯覚させる。

我々と同じように翻弄され、苦しみ、藻掻き、足掻く。そんなある種“普通の人”がいるからこそ、私たちはより一層、奥田英朗作品に夢中になってしまうんじゃないだろうか。

 

オススメ作品を紹介!

前置きが長くなってしまった。記事の趣旨に戻ろう。

今回の記事では、ゴリゴリの奥田英朗ファンである私が「これは鉄板」という奥田作品を選抜させてもらった。

どれもこれも極上であり、これに慣れてしまうと他の作品が面白く感じられなくなってしまう可能性があるのでご注意いただきたい。ぜひとも用法用量を守って欲しい。

 

では行ってみよう。

 

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イン・ザ・プール

イン・ザ・プール (文春文庫)

奥田 英朗 文藝春秋 2006-03-10
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「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。 

やはり最初に紹介するならば伊良部シリーズは外せないだろう。私もここから奥田英朗作品にハマっていった。

栄えある直木賞を受賞したのは、次巻の『空中ブランコ』ではあるが、『イン・ザ・プール』もまったく遜色ない出来である。ちなみにシリーズにはなっているが、基本的に短編集でありオムニバス形式なので、どちらから読もうが問題はない。

まずは伊良部の強烈なキャラに魅了されてみてほしい。

 ちなみに映画化もドラマ化も舞台化もされているのだが、伊良部の配役ではどれも納得いっていない。そもそもあんな妖怪じみた男なので、誰がやろうとも違和感はあったと思うが、それでもドラマ版の阿部寛だけは本当に意味がわからない。

 

空中ブランコ

空中ブランコ (文春文庫)

奥田 英朗 文藝春秋 2008-01-10
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傑作『イン・ザ・プール』から二年。伊良部ふたたび!
ジャンプがうまくいかないサーカス団の団員、先端恐怖症のヤクザ……。精神科医伊良部のもとには今日もおかしな患者たちが訪れる。 

ということで、直木賞受賞作もオススメしておく。

一作目の『イン・ザ・プール』と遜色ない出来だが、やはり奥田英朗自身が伊良部シリーズの書き方に慣れてきていることもあり、いくらか質がいいかもしれない。 

ちなみに三作目の『町長選挙』は読まなくても大丈夫である。

 

家日和

家日和 (集英社文庫)

奥田 英朗 集英社 2010-05-20
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家庭内の「明るい隙間」を描く傑作短編集 ネットオークションにはまる専業主婦、会社が倒産し主夫となった夫、ロハスに凝る妻に辟易する小説家の夫……など。あたたかい視点で描く新しい家族の肖像。第20回柴田錬三郎賞受賞作。 

奥田英朗の真骨頂というべきか、一般市民を描かせたら東西一の腕前を見せてくれる。

この作品に出てくるキャラクターこそ我々読者と同じ“普通の人”である。それゆえに作中に出てくる“あるある”に悶絶することだろう。たぶん、「Amazonの高評価の数=あるあるに悶絶した数」と見ていいと思う。みんな悶絶しすぎ。

それにしても、人ってのは理解されたい生き物なんだなぁと改めて思った次第。あるあるが出てくるのが面白いってのは、つまるところそういうことでしょ?

 

最悪

最悪

奥田 英朗 講談社 1999-02-16
売り上げランキング : 517513
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その町には幸と不幸の見えない境界線がひかれている。事業拡大を目論んだ鉄工所主・川谷を襲うウラ目ウラ目の不幸の連続。町のチンピラの和也が乗りこんだのは、終わりのない落ちるばかりのジェットコースター。「損する側のままで終わりたくない!」追いつめられた男たちが出遭い、1本の導火線に火が点いた。 

最悪という名の最高の作品。群像劇になっているが、これがもう疾走感が素晴らしい!

この作品なんかはまさに奥田理論である「魅力的な人間を作り出せば、あとは勝手に面白い話ができる」の典型例だろう。面白すぎである。

『最悪』の名の通り、各キャラクターの最悪ばかりが描写され、人によっては読んでてい辛くなるかもしれない。

しかし、他人の不幸は蜜の味である。フィクションであることを理由に、存分に不謹慎な蜜の味を堪能していただきたい。

 

東京物語

東京物語 (集英社文庫)

奥田 英朗 集英社 2004-09
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1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトントム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散ジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊…。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、まぶしい青春グラフィティ。 

80年代のエッセンスをこれでもかと詰め込んだ短編集。

私は久雄とは全然世代が違うのだが、この青臭い感じとかその他もろもろが、何だか胸を打って仕方なかった。 これぞ青春という感じである。

誰にでも愚かな部分があり崇高な部分がある。そして、変わっていってしまう部分があり、いつまでも変わらない部分がある。相反するそれら全部をひっくるめて、私たちは不完全な人間として生きている。

不器用だったり振り回されたりしながら、それでも自分の中の大切なものにしがみつく。

そんな私たちの心に染みる物語である。

 

延長戦に入りました

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)

奥田 英朗 幻冬舎 2003-06
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ボブスレーの二番目の選手は何をしているのかと物議を醸し、ボクシングではリングサイドで熱くなる客を注視。さらに、がに股を余儀なくされる女子スケート選手の心の葛藤を慮る、デリケートかつ不条理なスポーツ無責任観戦!読んで・笑って・観戦して、三倍楽しい猛毒エッセイ三十四篇。 

エッセイも紹介しておこう。これだけ多彩な作品を生み出す奥田英朗とは一体何者なのか。このエッセイを読んだところで何もわからないのだが、それでも「こんな面白いおっさんなんだから、面白い小説を書けて当然か」とよく分からない納得の仕方をしてしまった。下らないけど、妙に納得もさせられるエッセイである。

そういえば、奥田英朗の文章はやたらと説得力に溢れている。そもそも小説家なんてのは大ホラ吹きの詐欺師みたいなものだから、人を操ることに長けているのかもしれない。

ちなみに続編の『どちらとも言えません』も最高なのでオススメしておく。

どちらとも言えません

奥田 英朗 文藝春秋 2011-10
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邪魔

邪魔(上) (講談社文庫)

奥田 英朗 講談社 2004-03-15
売り上げランキング : 93117
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及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴1年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。 

『最悪』の流れを組む群像劇。『最悪』が楽しめたならこちらも自動的に楽しめることだろう。

それにしてもこれだけの分厚い作品(上下巻で800ページ)をこれだけ一気に読ませてしまう奥田英朗の筆力にはほんとうに驚かされる。短編を書かせても上手いし、長編を書かせたらやたらと中毒性があるしで、器用な作家である。

最悪と違い、ちょっとした“意外な展開”が用意されている点も評価している。

 

サウスバウンド

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

奥田 英朗 角川書店 2007-08-31
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小学校6年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても変わってるという。父が会社員だったことはない。物心ついた頃からたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、よその家はそうではないことを知った。父は昔、過激派とかいうのだったらしく、今でも騒動ばかり起こして、僕たち家族を困らせるのだが…。―2006年本屋大賞第2位にランキングした大傑作長編小説。 

私が常々語っている「本屋大賞は信用できる」を地で行く作品。ブレーキの掛け方を知らない父親に振り回される物語なのだが、これがまた最高に痛快である。ちょっとファンタジーな終わり方も独特の味わいがあって好きだ。

こちらの作品も奥田英朗の詐欺師っぷりが遺憾なく発揮されており、私はこの作品のせいでやたらと共産党びいきになってしまった。志位和夫の笑顔が可愛くて仕方ないのも『サウスバウンド』のせいだろうか。誰か教えて欲しい。

 

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金(上) (講談社文庫)

奥田 英朗 講談社 2014-11-14
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小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は? 吉川英治文学賞受賞作 

今のところ、私の知る限り奥田英朗の最高傑作はこちらの『オリンピックの身代金』一択である。

作品に込められた熱量は半端ではなく、読みながら蒸し暑くなってくるほど。これほどのエネルギーに満ちた作品にはそうそうお目にかかれないはずだ。

そしてそれだけのエネルギーがあるからこそ、私たち読者はページを捲る手が止められなくなってしまう。もう身体は奥田英朗に操られるがまま。読み始めて数分も立つ頃にはあなたは傀儡と化すだろう。

あまりの面白さに読み終わったあと、燃え尽きたような感覚に陥るのでご注意である。

 

でも基本的にどれも面白い 

なんて色々紹介してみたものの、実は奥田英朗作品はどれも面白いのであまり迷わずに手当たり次第に読んでもらいたい。ただし『町長選挙』と『無理』は別に読まなくても良いと思う。でも本当にそれくらいである。

Amazonの評価レビューを読んでみるとよく分かるが、みんな奥田英朗の器用さにやられているようである。

作品の幅の広さがあるから、作品によって全然違う面白さがあるし、キャラクターの内面描写やエピソードの作り方がいちいち説得力を持っているので、それだけハマりやすい作家なのだと思う。

 

きっとあなたも大好きな作家のひとりなることだろう。それくらい読み手を選ばない作家が奥田英朗なのだ。

 

以上。参考にされたし。