俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

暴露すぎて羨む気持ちも無くなる。森博嗣『作家の収支』

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どうも。

いつも上品極まりない森博嗣が珍しく大衆受けしそうな下世話な話題を提供してくれた。

ずばり「自らの収入を公表する」である。どうだ、こんなにどストレートなテーマがかつてあっただろうか。

ということで、せっかくの奇書を楽しませてもらうこととした。

内容紹介

作家の収支 (幻冬舎新書)

森 博嗣 幻冬舎 2015-11-28
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by ヨメレバ

1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。以来19年間に280冊の本を出したが、いまだミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』でさえ累計78万部だ。ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうにマイナな作家である―総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学。 

毎度のことながら、商品の紹介文というやつは本当に大仰である。はっきり言ってこの本は経営学ではない。ただ単に、森博嗣が執筆活動でどれだけ儲けたかを語っているだけである。それは経営学ではないだろう。

この本で暴露されている数字

再三、森博嗣は自らの著書の中で「自分は正直者だ」と語っているが、その言葉にはどうやら嘘偽りはまったくなかったようで、『作家の収支』ではこれでもかというぐらい全部の数字が載っている。この作品の肝なので具体的な数字の転載は控えるが、この本で知ることができる数字の紹介だけはしておこう。

 

・原稿料

・印税を考慮した時給換算

・著者最大のヒット作『すべてがFになる』の発行部数の推移。(ノベルスと文庫の両方) 

著作の印税率

・全著作の版別(本の形)の累計部数

・印税額の推移

・依頼料(スポンサーから支払われる)

・入試や教科書に使われた場合の金額

・ブログの書籍化による収入

・解説、推薦文の金額

・翻訳されたときの印税率

・マンガ化されたときの印税率

・絵本の印税率

・インタビュー料

・テレビの出演料

・講演会料

・ドラマ化のときの著作権

・映画化のときの著作権

・『スカイ・クロラ』の発行部数推移

 

これらが事細かに数字で紹介されている。バカ正直とはこのことである。森博嗣はバカではないが。

もしこれから小説家を目指そうと考えている人や、今現在執筆している人にとっては最高にモチベーションが上がる内容になっている。

あけすけすぎて羨ましくもない

印税率の%の話ぐらいならば分からなくもないのだが、具体的な金額の数字になると、途端に数字が跳ね上がるので、私のような小市民にはとてもじゃないが感覚が追いつかない。

更に森博嗣の語り口が、あえて意識しているのだろうが、非常に淡々と事実を列挙してくるので余計に現実感がない。「本当にそんなに儲けてるの…?」と聞きたくなってしまう。

普段の私であれば、それだけのお金を手にしている人を知ったら嫉妬の炎で死にそうになるのだが、これだけサラリと書かれてしまうと、そんな気も起きないというものだ。「はいはい、天上人なのね」といった感じである。素直な気持ちで読めるとも言えるだろう。

やはり特別だったか…

『作家の収支』では、森博嗣が考えた「売れる方法」や「創作することについて」、「小説家として大事なこと」などが所々に書かれている。たぶん、紹介文の「経営学!」というのはこの部分のことを言っているのだと思われるが、役には立たなそうである。

私があまりにも一般人すぎるからかもしれないが、やはり森博嗣は特別だと感じてしまうからだ。普通じゃない。

生産量からしてそうだし、戦略的な考え方もそうだし、何も考えずともあれだけの作品を創作できてしまう所など、真似しようにもできる部分があまりにも少なすぎる。強いて言うならば「とにかく生産する」という所だろうが、それであればわざわざ本書を読む必要はない。前作とも言える『小説家という職業』を読むべきである。

小説家という職業 (集英社新書)

森 博嗣 集英社 2010-06-17
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小説家はラクか?

『作家の収支』でたびたび書かれていることは、「小説家はコストがかからない」ということである。パソコンさえあれば0円で生産することができる。森博嗣のように何の取材もせずに想像だけで作品を創ってしまうのであれば尚更である。時間も食わない。

他にも小説の強みはたくさん紹介されているのだが、これだけを読むと「小説家っていいじゃん!」と受け取りがちである。私も若干そちら側になびいた。

しかし冷静に考えてもみると、それだけ簡単だからこそ今の世の中には腐るほど売れていない小説家がいるのだ。

『小説家になろう』辺りを覗いてみれば、その深い闇に触れることができるはずだ。はっきり言って地獄である。

強みが拠り所になる

だが、森博嗣の姿勢からは学べることはある。同じように小説を使って成功することは難しいだろうが、「自分のやっていることの強みを把握する」というのは非常に大事だ。

人間、何か新しいことにチャレンジしたときや結果が出ないときに1番の敵になるのが「不安」だ。この悪魔のせいで続けられなくなったり、諦めたりしてしまうことがほとんどである。憎い奴だ、不安。

そんなときに心の支えになるのが、「自分の強み」だ。これにすがることでもう少しだけ粘ることができたりする。

最近(2017年1月現在)は「GRIT 」なんて言葉が流行っているが、誰もが継続するために苦しんでいるのだろうと想像している。

結局はやるかやらないか

いたる所で語られている言葉だが、結局、成功するためには「やるかやらないか」しかなさそうである。以前の記事でも書いたが、私のような凡人であれば尚更である。四の五の言うヒマがあったら手を動かせ、頭を使え、という話である。

森博嗣は特別だが、だからと言って諦めていても誰も助けちゃくれないし、人生を向上させてはくれない。

だからやるしかないのだ。同じ諦めるなら、「やるしかねえか…」と努力しないことを諦めたいと思う。

 

以上。

作家の収支 (幻冬舎新書)

森 博嗣 幻冬舎 2015-11-28
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