俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

パズルミステリーの金字塔。西澤保彦『七回死んだ男』

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偉大なチリチリ頭が生んだ名作の紹介。

 

 

パズルミステリーの金字塔

どうも。ミステリー中毒にひろたつです。天パーではありません。

今回紹介するのはこちら。

同一人物が連続死! 恐るべき殺人の環。殺されるたび甦り、また殺される祖父を救おうと謎に挑む少年探偵。どうしても殺人が防げない!? 不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう、渕上零治郎老人――。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは! 時空の不条理を核にした、本格長編パズラー。 

 

パズルミステリーと呼ばれるジャンルがある。

時間軸をいじったり、視点を入れ替えることで、読者を迷宮へと連れて行くミステリーである。

このミステリーの良いところは、明快な解答を得られることである。

パズルと銘打つだけあり、完成図が提示されると「こういうことだったのか!」と膝を打ちたくなるような快感がある。

 

その一方、あまりにも入り組んだパズルになると、頭の悪い私のような読者の場合、論理についていけなくなったりするという悪いところもある。まあ、悪いのは私の頭なのだが。

 

そんな読者に強烈な快感をもたらしてくれるパズルミステリーであるが、名作と呼ばれるものが何作か存在する。

その中でも特にミステリーファンの中で評判が高いのが今回紹介する『七回死んだ男』である。

 

先に言っておくが、

 

これは凄いぞ

 

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SFとミステリーの融合 

まず『七回死んだ男』はSFであり、ミステリーでもあるということを理解してもらいたい。

あらすじにも書いてある通り、主人公の少年は「時間の反復落とし穴」というものにハマってしまう。よくあるループものである。

著者の西澤保彦(天パー)はこの設定を最大限に活かし、読者をめくるめく迷宮の中へと誘う。 

 

私はこの設定に完全にヤラれたわけだが、中には「ミステリーにSFの設定を持ってくるのは卑怯」と感じる人がいるらしく、そういった硬派なミステリー好きにはオススメできない作品ではある。

 

だが、私は基本的にミステリーなんて「欺いてくれれば、それでいい」としか考えていないので、そういった意味でも『七回死んだ男』には大満足だった。

 

大体にして、『七回死んだ男』はSFの設定を使ってはいるものの、論理は構築されており、まったく破堤していない。読者が納得できないようなムダ肉的要素は存在しない作品なのだ。

であれば、ミステリー好きとしては文句などあるはずがなかろう。

 

ピースがはまっていく快感 

パズルミステリーの最大の魅力はやはり「ピースがはまっていく快感」にある。

 

SF設定も相まって『七回死んだ男』は、読み始めのところでは相当困惑させられる。まさに迷宮だ。

 

訳の分からない状況に陥り、さらにはコントロール不能とくれば、そりゃあもうストレスが溜まる。

でもそのストレスが、まるでパズルがはまるかのようにひとつひとつ解決していく過程は、

 

快感

 

の一言である。

 

作品を通して読者にストレスをかけ続け、揺らし続け、最後には最高の種明かしがされるという、ミステリー小説至上でも屈指の快感を得られる作品が『七回死んだ男』なのだ。

 

例えるならば、そうだなぁ…。

山登りみたいなものかもしれない。

登っている間は小汚い山道しか視界に入らないし、自分がどこにいるのかもよく分からない。

しかし、登りきってしまえばそこに広がるのは絶景。そして自分の登ってきた道のりが見渡せるのだ。「さっきまで苦しんでいたのはあそこだったのか」と振り返ることができることも何とも言えない快感がある。

 

この爽快感をを得るために、読者は西澤保彦が用意した迷宮に挑むのだろう。

そしてこれこそが、ミステリーだからこそ得られる愉悦である。

 

作者の志に拍手

実際に読むとよく分かるが、『七回死んだ男』は本当によくできたミステリーだ。無駄のなさに驚かされる。

ネタバレはしないので核心には触れないが、このアイデアを思いついたとしても、実際に構築するとなると並大抵の労力では完成させられない。本当に西澤保彦は偉い。天パーだけど。

 

元々がSFという設定なので、西澤保彦の志がもう少し低ければ、設定に逃げるような展開もありだったと思う。作者に優しい設定を追加してもよかったはずなのだ。

でもこの形だからこそ目指す作品のレベルに到達すると信じていたのだろう。

そして逃げずに書き上げた結果、こんなにも読者が、迷い込み、納得し、そして欺かれる作品ができあがったわけだ。

 

もう一度繰り返そう。西澤保彦は偉い。

 

もう一度繰り返そう。天パーだけど。

 

美しささえ感じるほど

ということで『七回死んだ男』は文句なしのミステリーの傑作である。

あまりにも完璧な作りなので、読み終わったときは作品に対して“美しさ”さえ感じるほどだ。

 

深い謎、完璧な論理、そして奇想。

ミステリーのひとつの答えがここにある。

 

ぜひ最高のパズルを愉しんでいただきたい。

 

以上。

 

 


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