俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

夢はまだ先の先。漢a.k.aGAMI『ヒップホップ・ドリーム』

f:id:summer39191628:20170111103300j:plain

 

どうも。

フリースタイルダンジョンでヒップホップにハマった、超ミーハーのひろたつです。ご機嫌麗しゅう。

今回紹介するのは、フリースタイルダンジョンのモンスター、漢a.k.aGAMIによる著書『ヒップホップ・ドリーム』である。

強烈な一冊

ヒップホップ・ドリーム

漢 a.k.a. GAMI 河出書房新社 2015-06-24
売り上げランキング : 8983
by ヨメレバ

新宿スタイルはリアルしか歌わねえ──
マイク1本で頂点を競う純粋なるヒップホップの精神とそれを裏切るシーンの凶暴で陰惨なる現実。ビーフや騙し合いが渦巻く世界でラッパーは何を夢見るのか?日本語ラップを牽引するカリスマによる自伝的「ヒップホップ哲学」の誕生!

 実はヒップホップってのはマニアックな世界で、知らないと楽しめないことがかなりある。私もそうだが、韻踏みの曲芸だけを楽しむだけの人が多い。しかしもっと深みを知るとヒップホップという“文化”を理解できるし、面白いはずだ。

そんな深みを教えてくれる一冊が『ヒップホップ・ドリーム』である。

 

スポンサーリンク
 

 

狂気さえ感じる哲学

本書の内容は、漢の半生、考えてきたこと、そしてヒップホップ哲学になる。

アンダーグラウンドな話が大量に出てくるので、私のような平和な世界の住人は読んでいてクラクラするような感覚を覚える。よく捕まらなかったなと。

だがそれも本書の魅力ではあるのだが、一番はそれではなく「ヒップホップ哲学」にある。漢が一番伝えたかったであろうことは本書を読めばすぐに分かるし、繰り返し記されている。

その哲学は漢の信念とも言えるもので、仲間たち共有している様は「カルト宗教」のように感じた。

実際のエピソード

分かりやすいエピソードを出す。

漢の標榜するスタイルとして「リアルしか歌わない」というものがある。つまりラップでは嘘も飾りもしないということだ。

漢が所属するMSCのメンバーがとあるラップバトルの大会で、勢い余ってなのか、それとも韻を踏むために仕方なかったのか分からないが、相手に対して「刺す」とラップしたそうだ。

試合後、漢はニヤニヤしながらそのメンバーに「お前、さっき『刺す』って言ってたけどどうすんだよ?」と詰めかける。

当然そのメンバーも「リアルしか歌わない」ことは理解しているので、僅かながら逡巡したあと、「やるしかねえだろ」。

MSCでは特別に、ラップの内容がリアルじゃなかったとしても2週間以内にそれを実行すればOKというルールを適用していた。

つまり、このあと対戦相手を「本当に刺す」ということ。

 

その後どうなったかは本書を読んでもらいたい。

正直、引いた。

 

曝け出しすぎじゃね…?

その他にみんなが好きそうなエピソードといえば、「ストリートビジネス」である。

実際に漢がどうやって仕入れて、どうやって税関をクリアしたかなどが書いてあるし、中には、所持しているときに警察から職務質問をされたときの話も載っている。しかもその場にいたのがAWAの超格好良いCMで有名なanarchyだったりするからさらに面白い。

 

↓これね。


AWA ANARCHY & DJ IZOH CM いつか億円 音楽配信アプリ

 

番組で漢のラップを聴いていれば、「あれ」をやっているのは分かっていたが、まさか売人までやっていたとは驚きだし、何よりも実態をこんなに曝け出しちゃって大丈夫なのかと心配にもなった。

フリースタイルダンジョンでは負け続けだが、漢のキャラクターは番組にとっても重要だし、みんな好きでしょ?漢のこと。

なんてことを思いながら読んでいたら、どうやら今は足を洗っているらしい。安心、安心。

それにして、そんなやばいビジネスに手を出しても月に300万程度しか稼げないってのは意外。人生を棒に振る可能性もあるんだから。

まあヒップホッパーの場合、それが武器になるからよく分からないけど。

 

スポンサーリンク
 

 

漢のことが好きになる

本書を読んで感じるのは「漢は孤独でいられない」ということ。

あんなジャイアンな見た目をしているけど、実は寂しがり屋で仲間が欲しくて、しかも仲間とは強烈な絆が欲しい。それは自身のレーベルに「鎖」という言葉をチョイスしている辺りにも感じられる。

そして「ひたむきさ」を感じる。

上に書いたようなバイオレンスなエピソードはあるものの、根底には「ヒップホップと真摯に向き合う」という姿勢があるからこそ。誰よりもヒップホップの在り方を考えて、ラッパーの地位を確立して、居場所を確保するために、行動している人間だと思う。

つまり漢のことが好きになるってことだ。あの見た目だから誤解されやすいんだろうけど、純粋な男だと思う。

KNZZがこの『ヒップホップ・ドリーム』に落書きをした画像をインスタに挙げていたけど、きっとちゃんと読んでいないか、売名行為としか思えない。

それくらい真剣な文章が詰まった本だ。

真剣な人を笑うやつは多いけど、その姿勢は素直に胸を打つ。

夢を背負う人間

本のタイトルは『ヒップホップ・ドリーム』。最初に見たときは漢がどれだけ成功を収めたかの話だと思っていた。アメリカンドリーム的なものを想像していた。

だが実際はそんな甘いものじゃなかった。仲間の裏切りがあったり、漢の哲学や正義感のせいで泥沼にハマったり、そもそも日本でヒップホップのCDはほとんど売れていなかったりと、苦しいことばかりである。

だがそれでも漢は本書の最後に自身が持っている一番大きな夢を語っている

そのために「鎖グループ」なんてレーベルを立ち上げたり、「KING OF KINGS」というラップバトルの大会を主催したりしている。

自身の活動に加えてそれである。余計な重荷を背負いすぎだと思う。

だが、そうやって大きな荷物を背負うだけの覚悟なければ、夢を叶えることなんてできないとも思うのだ。自分に負荷をかけることでさらに大きいな存在になろうとしているのかもしれない。

 

まだまだ漢は夢の途中で、道はかなり遠そうである。

しかし漢の目はまっすぐ前を向いているし、その姿勢に胸を打たれた仲間に囲まれている。

そんな夢に向かう漢(おとこ)の背中にエールを送りたいと思う。

 

きっと漢は「それはリアルか?」なんて言うだろうけど。

 

以上。

ヒップホップ・ドリーム

漢 a.k.a. GAMI 河出書房新社 2015-06-24
売り上げランキング : 8983
by ヨメレバ

 


スポンサーリンク