俺だってヒーローになりてえよ

何が足りないかって、あれだよあれ。何が足りないか分かる能力。

鳥肌が立つぐらい怖い話をしてやろう。『エロDVD』

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これは私の話ではない。

 

どうも。

私は怪談の類が好きでよく読むのだが、やはり実体験には敵わないと思わされる出来事があった。

数人の知人にこの話をした所、総じて悲鳴を上げてくれたのでかなりのクオリティだと思っている。しかもネットで似たような話を読んだことがない、というのもポイントだ。

ネットが普及したことで怪談はネタのパターンがほとんど出尽くしている感がある。

もしあなたが新しいパターンの怖い話を知りたいのであれば、この記事は役に立てると思う。

ちなみにこれは私の体験談ではなく、あくまでも私の知人の体験であることを明言しておく。

 

では心してかかっていただきたい。あなたを恐怖の世界を誘おうじゃないか。

これはある男とその男に取り付いた悪霊の話のようなものである。

 

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収集癖

知人のHさんにはある収集癖があった。それはエロDVDを集めることだった。

このインターネット全盛の時代に何をそんなに買い込む必要があるのかと不思議に思われるかもしれないが、これはもう完全に癖なので理屈ではない。欲しいから買う。手元に置きたいから買う。ひどく単純なことなのだ。

その量は半端でなく、200~300本は下らない数だった。

ジャンルも多岐に渡り、女優も年代もさまざま。企画物からフェチに至るまでなんでもござれだった。

Hさんはこのコレクションを部屋の本棚に整然と並べていた。本棚もまさかこんなにエロDVDを入れることになるとは思わなかったことだろう。

転機

私のHさんの収集癖は留まることは知らなかったし、留まる必要もなかったわけだが、ある転機が訪れる。

彼女ができたのだった。

彼女は職場の同僚。そして彼女にはある欠点があった。その欠点は一般の感覚で言えば欠点とは言えないのだが、Hさんにとっては欠点だった。

彼女には潔癖な所があり、「彼氏にエロDVDを見てほしくない」と考えているのだった。曰く、「浮気されているようでイヤ」とのこと。だからエロDVDを処分してほしいとも。

Hさんは抵抗した。浮気ではない。男にとっては普通のことなんだと。みんなこんなものなのだと必死に弁明した。ここまで彼が本気になったことは彼の人生の中で無かった。それぐらい必死だった。

しかし彼女の意志は固かった。「じゃあ別れる」の一点張り。

そこでHさんは遂に観念した。エロDVDを部屋から撤去することにしたのだった。愛のなせるわざである。彼女はほっとした表情を浮かべていたし、きっと本棚も同じ気持ちだったことだろう。

秘匿

しかし愛があったからといって人間性が変わるわけではない。一度染み付いた癖はそうそう簡単には落ちない。Hさんに取り憑いた悪霊は霊媒師に思いっきり鈍器とかで殴ってもらわない限り成仏はしないことだろう。ただその解決法だとHさん自身も成仏する可能性がなくもないが、それくらい強力な悪霊なのだ。

彼女に「処分する」と言った手前、もう部屋にエロDVDを置いておくことはできない。だがHさんには処分する気はさらさらなかった。とにかく彼女の目の触れないところに避難させようと思った。

そこでHさんは会社の同僚たちに協力を求めた。

私の会社では各自にロッカーが割り当てられている。正直そこまで必要になるものではないのだが、用意されている。Hさんはこれに目をつけた。仲のいい同僚たちに声をかけまくり、秘蔵のコレクションを小分けにしてロッカーに入れてもらうようにしたのだ。もちろん、協力してくれたお礼にDVDはいつでも持ち帰って鑑賞してもらって構わないという特典も付けた。

Hさんの変態性を十分把握していた同僚たちは快諾してくれた。彼の変態性は友情とエロに救われたわけだ。

手放せない作品

しかしHさんの変態性はそこで終わらなかった。どうしても手元に置いておきたい4作品があった。他のものは泣く泣く会社に秘匿したが、その4作品に関しては何があっても手放したくなかった。

Hさんは彼女にばれないように、その4枚のDVDを茶色い紙袋に入れ、机の引き出しの更に奥に入れておいた。その場所は引き出しを開けただけでは分からず、それこそ机ごと移動させでもしない限りは見つかる恐れはなかった。

そこまでしてHさんが手放せなかった作品のアフィリンクでも貼りたい所だが、このブログを18禁にするわけにはいかないので、それは諦めることとしよう。

平和な時間、そして結婚

エロDVDが無くなって幸せそうな彼女。そして手元に珠玉の作品4枚を置いておくことで精神を保っているHさん。そんな2人には当然のことながら平和な時間が流れた。

そのまま2人は結婚することになった。結婚指輪は奥さんに決めてもらった。可愛らしい植物をかたどったダイヤの指輪だ。

結婚を機にHさんはマイホームを購入した。奥さんになった彼女とHさん、そしてエロDVD4枚の新生活が始まったわけだ。

相変わらずDVDの隠し場所は机の引き出しの奥。茶色い紙袋の中だ。

すべて上手くいっていた。Hさんは奥さんと隠したエロDVDとこのまま一生幸せに暮らせると信じていた。

ある日のこと

その日、Hさんは仕事が遅くなった。家に着くと奥さんはもうすでに寝ていて、家の中は暗くなっていた。

仕事は忙しくかなり精神的にも追い詰められていたHさんは、心を潤すためにも久しぶりにあのDVDを引っ張り出すことにした。

どうしても手元に置きたいと隠したDVDだったが、Hさんは別にそれを頻繁に観るわけではなく、ただただ手元に置いておきたいだけなのだ。そこにHさんの変態性を垣間見る思いである。

2階で眠る奥さんを起こさないよう静かに行動を開始するHさん。机の引き出しをそっと取り出す。袋は…あった。茶色い紙袋が丸まって机の奥で息を潜めている。その姿を見るのは実に4ヶ月ぶりだった。

Hさんは手を伸ばし紙袋に指を掛けた。

瞬間、違和感を感じる。

指を伝わってくる感触が見知ったものではなかった。Hさんの顔から血の気が一気に引く。心臓の鼓動が痛いくらい脈打っていた。緊張感に視野が狭まるぐらいだった。

軽い。あまりにも軽い。DVD4枚が入っている重さではない。

Hさんは絶望的な気分で紙袋を取り出した。やはりそうだ。完全に袋の中は空だった。

ただの紙袋が押し込まれていたのだった。

「バレてたか…」

あの作品たちと別れることになってしまったのは悲しい。しかし、あんなにも毛嫌いしていたDVDの存在に気付いたにも関わらず、ただ捨てるだけでHさんには何も文句を言わずにいてくれた奥さんに感謝する気持ちもあった。

「付き合った頃は別れるなんて言ってたぐらいだったからな。それに比べればまあいいか…」

そう自分を納得させたHさんだった。

「…ん?」

紙袋をゴミ箱に捨てようかと持ち上げた瞬間にまた違和感を感じた。

袋の中に何か入っている。確かめるために袋の口を下に向けた瞬間…

 

 

足元に、植物をかたどった指輪が転がり落ちてきた。

 

 

何も語らない奥さん。何も語れないHさん。

奥さんはいつも結婚指輪を着ける人だった。だがあまりにも当たり前になっており、普段指輪を着けているかどうかなんて気にしていなかった。どうやっても今朝指輪を着けていたか思い出せなかった。

それに今朝まで奥さんは普通に対応していた。そりゃあ機嫌が悪い日も無いわけではなかったが、基本的には何も変わらない奥さんだった。

それが逆にHさんには怖かった。この足元に転がっている指輪の意味が分からなかった。分かりたくなかった。

Hさんは震える指でその怨念のこもった指輪を拾い上げると、そっと紙袋の中に入れ、再び机の奥深くへと仕舞いこんだ。すべてを無かったことにしたかった。

 

翌朝、緊張するHさんをよそに奥さんはやはりいつも通りだった。

 

毎日毎日変わらなかった。今もそれは変わらない。

 

 

ただ一点、指輪を着けていないこと以外は。

 

 

以上。