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俺だってヒーローになりてえよ

圧倒的な読書量と端から忘却していく貧相な記憶力、ふざけた文章を駆使するポンコツブロガー。 同情されているのか、やたらとオススメ本や漫画が売れている。月間250冊以上。 バカなことを書いて怒られること多し。

『いぬやしき』はほぼGANTZ。だけど悔しいが面白い。

マンガ


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どうも。

後輩からの強烈なプッシュを食らい、仕方なく奥浩哉の『いぬやしき』を読んでみた。

おい、これ完全にGANTZじゃねーか

確かに面白いよ。ページを捲る手が止まらないよ。だけどこれほぼGANTZだぜ?みんな大丈夫か?あれだけ痛い目に遭ったのをもう忘れちまったのか?

『いぬやしき』もGANTZほどではないにしろ、かなりの人気を博している。つまりみんなそれだけ楽しんで読んでいるということだ。馬鹿野郎め。また同じ過ちを繰り返そうとしているのか。

ということで、完全に奥浩哉の手の平で踊り狂っている読者の皆様のためにも、「なぜこんなにも『いぬやしき』は面白いのか?」ということを掘り下げてみようじゃないか。

未読の方は参考にしてもらいたい。私はネタバレをしないので安心してもらって大丈夫だ。また既読の方は『いぬやしき』をもっと理解するための記事になると思う。

あらすじ

老人にも見える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎は、会社や家庭からも疎外された生活を送っており、ようやく購入した一戸建てすらも、家族の歓心を得ることができなかった。不良に絡まれ虐げられる弱者を見て理不尽に怒りを燃やすも、結局何もできず、むしろ息子から「自分達は隠れて怯えてやり過ごすべきだ」と言われショックを受ける。さらに追い撃ちをかけるように胃ガンだと診断され、余命3カ月を宣告される。ガンのことを家族に打ち明けるタイミングが見つからず、打ち明けたとして家族が悲しんでくれるか思い悩む犬屋敷だったが、犬の散歩中に、獅子神皓と共に非常に小さな宇宙人による事故に巻き込まれ死亡する。事故を隠蔽したい宇宙人によって、生前の記憶や精神を持った機械の身体となって蘇ることとなる。

 ※wikiより引用

あらすじも何も知らなかったときは、いぬやしきなんてタイトルから勝手に柴犬の絡んだヒューマンドラマ的なものを想像していたが、安定の奥浩哉テイストである。一応、柴犬も出てくるけどね。

率直な感想

まず一番最初の感想としては、「クソ面白い」。これに尽きる。

ただ上にも書いたように、基本的な面白さの要素はGANTZとまったく同じである。GANTZ好きであれば、間違いなく楽しめることだろう。なので正確に言えば『いぬやしき』はGANTZなのかもしれない。

いぬやしきとGANTZに共通する面白さとして…

①先の読めない展開

②範囲外からの干渉

③残虐&ハートフル

④ライバル

この4点が挙げられる。順番に説明していこう。

 

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①先の読めない展開

王道マンガというのは、はっきり言って先が読めてしまう。主人公が苦しんで苦しんで、その先に勝つ。そしてまた新たな敵が現れる。その繰り返しだ。少女マンガの王道は知らん。片思いの子に告白されるんじゃないか?

なぜか人はそんなワンパターンにハマってしまう。その理由は分からないのだが、きっと私達の本能に根ざした何かがあるのだろう。

しかし王道パターンをやっていれば売れるかというとそうでもない。どの時代にも王道と呼ばれるマンガは存在するが、それはひとつに限られる。常にひとつだ。今ならそれは『キングダム』だ。少し前なら『ONE PIECE』だった。そういうことである。

そうなると王道以外のマンガはどうするのかと言うと、これは単純である。変化球で勝負するしかないわけだ。

GANTZ』に代表されるように奥浩哉作品は王道パターンを使わないかわりに、先の読めない展開で読者を物語に引きずり込む。

ではなぜこんなにも先が読めないのか。先が知りたいと思ってしまうのか。

②範囲外からの干渉

これは奥浩哉がデビューしたての頃から見られる傾向なのだが、我々人類が生きている世界とは別、外からの特別な力を干渉させることで物語を転がす手法を好んでいる。

GANTZ』で言えば例の黒い玉だし、『いぬやしき』で言えば人間以上の力を与えられたこと。初期の作品で言えば『変』では突然性別が変わるというものがそれにあたる。

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例えるなら、サイコロを振って出た目を予想するゲームをしている所に、サイコロの目をコントロールする力が加わるようなものである。ゲームのレベルの次元が変わってしまうのだ。

そうやって人類の外から加わる力によって、奥浩哉はサイコロの目を予想している私たちの想像を軽々と超えてしまうのだ。

③残虐&ハートフル

この要素は非常にポップというか、ニワカを惹きつけるためのものだと考える。

人は危ういものに目がない。というか、危ういものを見てしまう習性がある。

誰かが崖から落ちそうになっているのに、無視してそのまま登山を続ける人はいないだろう。

幼児が道路で遊んでいたらハラハラしてしまう。

その心理を利用することで作品に縛り付けてしまうのだ。フィクションだと分かっていても、「このあとどうなるんだろう?」と思わせる。

『いぬやしき』では可憐な美人がヤクザに拉致されるシーンがある。これがまさにそうである。読者の大半は暴力とは無縁の一般人だと思うので、こういったシーンではどうしても一般人側に感情移入してしまう。そこへ我々からすれば脅威となるヤクザを登場させる。

可憐な美女とヤクザ。非常に危うい。目をそらせなくなる。奥浩哉の得意技である。

また作品の中でも「残虐&ハートフル」は大きなファクターとして機能している。

物語を「面白い!」と思わせるには読者の感情を揺さぶることが重要になる。興奮でも感動でも怒りでも何でも構わない。とにかく揺さぶることが大事だ。

そのために「ハートフル」な日常や感情、人間関係などを見せた後、それを破壊するような「残虐」を登場させる。逆もまた然りで「残虐」なのに実は「ハートフル」な一面を見せたりする。それによって読者に揺さぶりをかけるわけだ。

これは『GANTZ』と『いぬやしき』でまったく変わらない。ずっと同じことで我々は楽しんでいる。分かってるけど面白い、という状況に私は非常に悔しさを覚えてしまうのだ。あれだけ『GANTZ』で痛い目を見たというのに…。

④ライバル

最後はこれである。

悟空とベジータに代表されるように、物語中のライバル関係には我々読者の胸を熱くさせるものがある。それによってドラマも生まれる。前回負けている方を応援したくなったりする経験は皆さんも身に覚えがあると思う。

物語を続ける上で大事なのは、「問題が解決していない状態」を維持することである。

言わば物語とは「問題を解決するまでの流れ」である。なので問題が解決してしまうと途端に興味が無くなってしまうのだ。それを防ぐためにも物語の中には常に何かしらの問題を発生させないといけない。

そういった意味でライバル関係というのは非常に有用である。『いぬやしき』では主人公犬屋敷壱郎が正義の存在とするならば、その対極として獅子神皓が存在する。

これは先程書いた「残虐&ハートフル」とも関係するのだが、相容れない真逆の要素を一緒にすることで生まれる対立が物語として機能するのだ。

読者に寄り添う存在である犬屋敷。読者を突き放す存在である獅子神。このふたりの対決に熱くならない読者はいないだろう。

まとめ

このように『いぬやしき』には我々が虜になるだけの理由がしっかりとある。そしてそれはあまりにも『GANTZ』と一緒である。別にそれ自体は何も悪いことではなく、ただただ自分たちの単純さに嫌気が差してしまうだけの話である。奥浩哉には変わらずにこのまま『いぬやしき』をぶっ飛ばして行ってもらいたい。

以上。

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